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公務員の副業解禁!? 自衛官はどうなの?

【第1部】自衛官の副業解禁は本当か?「実施できる」範囲と許可基準

「公務員の副業解禁」というニュースがメディアを賑わせています。働き方改革の一環として、政府は国家公務員や地方公務員の副業を一部認める方向へ舵を切りました。しかし、ここで自衛官が最も注意しなければならないのは、「自衛官は一般の公務員よりも圧倒的に規制が厳しい」という現実です。

自衛隊法第61条には「私企業からの隔離」が明記されており、営利企業の経営や報酬を得る事業への従事は原則禁止されています。第1部では、その厳しい規制の中でも実施可能な「例外」と、資産運用との境界線について、約2,500文字で深掘りします。

1. なぜ自衛官の副業は厳しいのか(法的根拠)

まず前提として、なぜ禁止されているのかを理解する必要があります。これは単なるルールではなく、自衛隊の組織運営の根幹に関わるからです。主に以下の3原則が壁となります。

  • 職務専念義務:勤務時間内外を問わず、職務に全力を尽くす義務。特に自衛官は24時間の即応体制(指定場所居住義務など)が求められるため、副業による疲労や拘束は許されません。
  • 信用失墜行為の禁止:自衛隊の社会的信用を傷つけるような職務(風俗関連や怪しい情報商材など)は論外です。
  • 守秘義務:副業を通じて部内の秘密が漏洩するリスクを完全に排除する必要があります。

一般の公務員であれば「公益性のあるNPO活動」などで許可が出始めていますが、自衛官の場合は「災害派遣や有事の際に、副業先に迷惑をかけずに即座に駆けつけられるか?」という観点が入るため、ハードルは極めて高いままです。

2. 自衛官でも「許可を得ればできる」副業

原則禁止ではありますが、人事院規則や防衛省の通達により、一定の基準を満たせば「承認」を得て実施できるものが存在します。これらは厳密には「副業」というより、「家業の手伝い」や「資産管理」の延長とみなされるものです。

① 不動産賃貸業(アパート・マンション経営)

自衛官の間で最もポピュラーかつ、公認されているのが不動産投資です。転勤が多い自衛官は、持ち家を貸し出すケースも多いため、制度として認められています。ただし、以下の基準(人事院規則14―8)を超えると「事業」とみなされ、許可が必要になります。

承認が必要になる基準(これ未満なら届出不要の場合も)
  • 規模:独立家屋で5棟以上、またはマンション等で10室以上。
  • 収入:年間の家賃収入(管理費等含む)が500万円以上。
  • 管理:管理業務(集金、清掃、クレーム対応)を管理会社に委託せず、自分で行う場合。

逆に言えば、「5棟10室未満かつ年収500万円未満」であり、かつ「管理を業者に委託している(自分は何もしない)」状態であれば、許可申請すら不要で実施できるケースが大半です(※部隊の規定によるため、念のため服務係へ確認推奨)。これが自衛官にとって最強の副収入源と言われる所以です。

② 太陽光電気の販売(ソーラーパネル)

土地を持っている隊員や、実家の土地活用として行われることが多いのが太陽光発電です。これも不動産同様、一定規模を超えると許可が必要です。

  • 定格出力:10キロワット以上の場合、許可が必要。
  • 収入:こちらも不動産同様、年間500万円のラインが一つの目安となります。

自宅の屋根に乗せる程度の小規模なものであれば問題ありませんが、野立ての産業用太陽光発電を行う場合は注意が必要です。

③ 農業・家業の手伝い

実家が農家である場合、繁忙期に手伝うことはよくあります。これが無報酬であれば単なる「親孝行」ですが、報酬を得る場合や、自分名義で農地を経営する場合は兼業許可が必要です。

特に「名義」が重要です。相続などで農地を引き継ぎ、販売収入を得るようになった場合は、速やかに部隊長へ申請し、承認を得る必要があります。公務員という立場上、営利を目的としない小規模農業であれば比較的許可は下りやすい傾向にあります。

3. 「副業」には当たらない資産運用

ここが多くの隊員が混同しやすいポイントですが、以下は「業(事業)」ではなく「資産運用」とみなされるため、原則として届出や許可は不要です。

株式投資・FX・仮想通貨・NISA・iDeCo

これらは金融商品の売買であり、労働の対価ではないため副業には当たりません。自衛官であっても自由に行うことができます。

【ただし、以下の点に注意が必要です】

  • 勤務時間中の取引:絶対にNGです。スマホで株価チェックをしていただけで「職務専念義務違反」として処分された事例があります。トイレ休憩中であっても、頻繁な取引は疑惑を招きます。
  • インサイダー取引:防衛産業に関わる企業の株を、職務で知り得た未公開情報を元に売買することは犯罪です。装備品調達などに関わる部署の隊員は特に監視されます。

4. 第1部のまとめ:安全圏は「不労所得」

第1部をまとめると、自衛官が安全に実施できる副収入の手段は、「自分の時間と労力を切り売りしないもの」に限られます。

不動産や株は、一度仕組みを作れば本人が演習に行っていても収益を生みます。自衛隊法が禁止しているのは「職務に支障をきたす労働」です。したがって、自衛官が目指すべきは「副業(Side Job)」ではなく「資産形成(Asset Management)」であると言えるでしょう。


【第2部】絶対禁止!懲戒免職リスクのある「できない副業」と発覚の仕組み

第2部では、近年トラブルが増加している「やってはいけない副業」について解説します。スマホ一つで稼げる時代になったからこそ、若手隊員を中心に安易に手を出してしまい、依願退職や懲戒免職に追い込まれるケースが後を絶ちません。

「バレなければ大丈夫」という甘い考えが通用しない理由(マイナンバーと住民税の仕組み)についても、約2,500文字で徹底的に解説します。

1. 明確に禁止されている副業(レッドゾーン)

以下の職種や行為は、営利企業の従事制限(自衛隊法第61条)に直結するため、発覚すれば即座に処分対象となります。

禁止事例リスト(実際に処分例あり)
  1. アルバイト全般:
    コンビニ、居酒屋、警備員、引越し屋など。これらは「雇用契約」を結ぶため、記録が公的機関に必ず残ります。休暇中に1日だけ、というのも不可です。
  2. ウーバーイーツ(Uber Eats)等の配達員:
    個人事業主としての業務委託契約ですが、継続的な営利活動とみなされます。GPS履歴や事故遭遇時に発覚するケースが多いです。
  3. YouTube・ブログのアフィリエイト収入:
    ここが現代の落とし穴です。広告収入(AdSense等)を得る行為は「営利事業」とみなされます。公務員YouTuberとして活動する場合は「収益化オフ」が原則です。
  4. ポイ活の域を超えた転売(せどり):
    不用品をメルカリで売る程度なら「生活用動産の譲渡」として非課税・問題なしですが、商品を仕入れて利益を乗せて売る行為は「商売」です。継続反復して行うと完全に副業認定されます。

2. なぜバレるのか?「マイナンバーでバレる」の誤解と真実

「マイナンバーで副業が会社(部隊)にバレる」とよく言われますが、正確なメカニズムは以下の通りです。

住民税の決定通知書が「犯人」

自衛官の住民税は、給与から天引き(特別徴収)されています。毎年6月頃、自治体から部隊の給与担当課(会計隊等)に「住民税決定通知書」が送られてきます。

この通知書には、前年の所得総額と、それに基づく税額が記載されています。ここで会計隊員は違和感を覚えます。
「あれ? この3曹、給与は400万なのに、所得が500万分ある計算で住民税が来ているぞ?」

給与以外の所得(雑所得や事業所得)があると、住民税が跳ね上がります。これが発覚の最大のルートです。普通徴収(自分で納付)にすればバレないという説もありますが、近年は自治体が特別徴収を徹底しており、副業分だけを分けることができないケースが増えています。また、アルバイト(給与所得)の場合は必ず合算されて通知が来るため、100%バレます。

3. 最新の注意点とグレーゾーン

時代とともに「どこまでがセーフか」の線引きも難しくなっています。特に注意すべき最新のトピックを挙げます。

SNSでのインフルエンサー活動

収益化していなければOKかというと、そう単純ではありません。企業から商品提供を受けてPR投稿をする(ステマ含む)行為は、現物給付という報酬を得ているとみなされるリスクがあります。
また、自衛官であることを明かして過激な発言でフォロワーを集める行為は、収益の有無に関わらず「品位保持義務違反」で処分の対象となります。

クラウドソーシング(ライティング・動画編集)

「Webライターとして記事を書く」「動画編集を請け負う」。これらは在宅で完結するためバレにくいと思われがちですが、クライアントが報酬支払調書を税務署に提出すれば、税務署経由で住民税情報に反映されます。
また、WordPressなどのスキルを持っている隊員が、知人の会社のホームページ作成を手伝い謝礼をもらうケース。これも「継続性」があると判断されれば兼業違反です。

4. 処分内容:軽い気持ちでは済まされない代償

副業が発覚した場合の処分は、以下の要素で決定されます。

  • 期間と頻度:長期間、常習的に行っていたか。
  • 収益の額:どれくらい稼いでいたか。
  • 職務への影響:勤務中にやっていたか、寝不足で遅刻したか。

軽いものであれば「訓戒」や「減給」で済むこともありますが、悪質な場合(風俗店での勤務や、勤務時間中の常習的な株取引など)は「停職」「免職」となります。

停職になれば、その期間の給与はゼロ、賞与も大幅カット、昇任もストップ、そして何より部隊内での居場所がなくなります。「月数万円の小遣い稼ぎ」のために支払う代償としては、あまりにも大きすぎます。

5. 結論:自衛官がやるべきは「副業」ではなく「自己研鑽」

ここまで解説した通り、自衛官が労働型の副業を行うことはリスクしかありません。しかし、将来に備える行動まで禁止されているわけではありません。

記事作成の要望にあったWordPressのスキルなどは、副業として使うのではなく、「定年退職後のセカンドキャリアの準備」として磨く分には何の問題もありません。在職中はスキルアップと正規の資産運用(NISA等)に集中し、退職した瞬間にフリーランスや起業としてロケットスタートを切る。これが、現役自衛官にとって最も賢く、かつ最強の生存戦略です。

【まとめ】自衛官の副業・可否チェックリスト
種類 判定 備考
不動産投資 〇(条件付) 5棟10室以下なら許可不要の場合多し。
株式・NISA 〇(推奨) 職務専念義務(勤務中のスマホ)に注意。
不用品売却 〇(限定) 家の整理レベルならOK。転売はNG。
アルバイト ×(絶対禁止) 雇用契約は即バレる。
YouTube収益 ×(原則禁止) 広告収入は営利事業。
ポイ活 △(グレー) 小遣い程度なら黙認だが、過度は危険。

万が一、自衛官の方が副業を検討されているのであれば、厳しい規律の中に身を置く自衛官だからこそ、ルールを正しく理解し、足元をすくわれないように行動してください。

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